化物

久しぶりに人前で泣いてしまった。情けないなぁ。

 

毎週そこそこの楽しみだった茶道の授業。

大学に入ってからお茶を淹れるのがちょっとした習慣と趣味になった。紅茶やルイボスティー、緑茶、ジャスミン茶、ハーブティー。色々な茶葉を集めては飲んでいて、その延長線上のワクワクした気持ちとともに、せっかく学類限定の講義なんだからと取ってみたものだった。

6人の超少人数でワイワイしながら、「難しいけど最後にはできるようになりますからね、何年も授業持ってるけど全員見届けたわ」と豪語する先生の言葉を信じ、そこそこ楽観的な参加ではあったけれど。

 

初回の授業から少し違和感を感じてはいた。袱紗(道具の清めなどに使う赤い布)の畳み方、みんなお手本通りに実践できてるのに1人だけ追いつかない。手の使い方を注意しようとすれば歩き方が変になるし、足の組み替え方もいくら見てもよく分からない。1つ進むごとに躓いて、それでもなんとか追いつけているつもりになってしまっていた。

 

実技試験当日の今朝はずっとソワソワしていて、朝からレジュメを復習したり、YouTubeで動画を調べたり。お茶碗とどんぶり、長めのスプーンをを茶器に見立てて1人で練習してみたりもした。授業の30分前、友達と実際の道具を使って実演も。ドキドキするけどきっと大丈夫、そう思ってたのに。

結果は全受講者のうち、私だけ不合格。

回数を重ねるほど「ここ気をつけなきゃ」が増えて、頭が真っ白になっていくのが分かった。

あれ、これって左からだっけ。ここは手前に引き寄せる気がする…考えれば考えるほどミスの泥沼。先生の声もどんどん冷たくなっていって。「もう絶対に間違えられない」とガチガチの動きにスロー映像のようなスピードで頭をフル回転させた。授業時間は超過していて、みんなが片付けを進める中で先生と二人きり。もう自分が今何をしているのかも分からなくて、記憶も朧だ。

 「全く練習できなかったんですか?」という先生の問いかけに「今日は家でも学校でも、練習してました…」と蚊の鳴くような声で答えた私に出された課題は、手順書の写し書きしえ先生の自宅へ郵送することだった。

稀に出る不合格者は先生の自宅にて続きの試験をすると聞いていたから面食らう。「やってもできないどうしようもないやつ」と判断されたのかな、そう思った瞬間もう視界がぼやけていた。

必死に声を抑えたがふと顔を覗かせた男友達がすごい顔をしていたのが見えた。情けなくて、合わせる顔もなくて、それから数十分潤みは引かなかった。

 

その後「アイスが食べたいの!」と言い出す友人に連れられたセブンで買ったティラミス氷と彼女の笑顔のおかげでなんとか心を取り戻すことができた。何も聞かず言わず、ただ寄り添ってくれたこの優しさを一生忘れないだろうなと思う。

 

高校の頃、世界史の王朝名や人物名、戦はいくらでも覚えられたのに、どれだけ時間を割いても三角関数やなんかの公式やダンスの振りは永遠に覚えられなかった。あの時に感じた絶望とよく似ていた。

 

自分に対して情けなさを感じると勝手に涙が出てしまうことが、本当に年甲斐なくて恥ずかしい。前のバ先で火のついた鍋を落として客席溶かしたときも泣いて店長をオロオロさせてしまった。彼氏の前でも何度か。

いつになったら大人になれるんだろうか。私は社会人に、どころか、人間になれるんだろうか。メイクや髪を綺麗にしても、ずっとモンスターのような醜さから逃れられない。

 

Weapons of mass destruction / andymori

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